File No. 04 研究テーマ
萩尾作品におけるバレエ―萩尾「バレエ・パレット」を理解する試み―

VOl.4 『感謝知らずの男』PFコミックス所収作品

text: 『感謝知らずの男』
プチフラワーコミックス/B6判/全1巻/小学館 / 初版1992.8.20

- s t o r y -

「感謝知らずの男」Part1(P5〜36)

バレエ学校の生徒であるレヴィは不眠症に悩んでいた。
静かな部屋を求めて引っ越したのにも関わらず、「親切」な隣人によって、
眠りたいだけの彼の希望はかき乱されていく。
対人関係がうまくとれないナイーブなレヴィにとっての災難をコミカルなタッチで描く。


作中で使われるバレエ作品
作中に出てくる実際にあるバレエ作品名を抜き出してみる。

●バレエ作品はそれぞれ【図書の家/仮想書庫】のバレエ紹介のページにリンクしています。タイトルをクリックしてください。

バレエ作品名
登場ページ
内容
◎この作品ではレッスンのダンスシーンのみ


「感謝知らずの男」Part2(P37〜68)

隣人モリスとその恋人ミリーの強引な親切に辟易するレヴィ。
ところがレヴィがソロを踊るバレエを見たミリーはその美しさに感動し、
ふとしたはずみで恋に変わってしまった。
そこまで深くは考えていなかったにも関わらずモリスとの三角関係に陥ったレヴィ。
二人とのトラブルに疲れ切った彼は願う...「感謝知らずの男になりたい」。
コミカルな中に、対人に不器用な主人公のペーソスが漂う作品。


バレエ作品名
登場ページ
内容
P41〜42 バレエ学校の公演でレヴィがソロを踊っている。


「オオカミと三匹の子ブタ」(P69〜108)

申し分のない王子様タイプであり実力のあるレヴィは、
しかしパートナーに厳しく口やかましいので、団の女の子達みんなに嫌われてしまう。
そこへ日本人のジュンが新しく彼のパートナーになるのだが、
小柄で大人しそうに見えた彼女は実力もあり、
外見に似合わずシビアなことをぽん、と言い切るはっきりした女の子だった。
そのジュンを相手になぜか調子を狂わせていくレヴィ。
踊れないつらさを初めて知ったレヴィの、本番の大逆転が気持ちの良いコミカルタッチの作品。


バレエ作品名
登場ページ
内容
眠りの森の美女 P73 ガラ・コンサートでレヴィが踊る予定の演目。オーロラ姫とのパ・ド・ドゥ。
ダンスシーンは練習中のモノは本編に数カ所あるが本番のダンスシーンはP102〜105


シンデレラ P73 ガラ・コンサートで過去にレヴィが踊った演目。


ペザント P74 ガラ・コンサートで過去にレヴィが踊った演目。


ばらの精 P74 レヴィのパートナーをお互いに振りあう会話の中、口々に出てくる演目の一つ。
「それにあたしはリンゴと“
ばらの精”踊るしさ」


ドン・キホーテ P74 レヴィのパートナーをお互いに振りあう会話の中、口々に出てくる演目の一つ。
「あたしビルと
ドンキ”だもの」


海賊 P74
レヴィのパートナーをお互いに振りあう会話の中、口々に出てくる演目の一つ。
「あたしミツグと“
海賊”だし」
ダンスシーンのカットはP101


タンゴ P97 本番の演目の一つ。
「きみ 二幕の“タンゴ”のソロだったな」


ラ・シルフィード P101 本番の演目の一つ。
「“
ラ・シルフィード”終わったわ 次は?」


「狂おしい月星」(P109〜194)

バレエ学校の友人達とともにローレンス・ロイヤルバレエに入団し、
いよいよプロダンサーとなったレヴィに公演の後、ファンから花束が届いた。
贈り主はカメラマン志望の青年、アーチーだった。
レヴィの写真を撮りたいといってきたアーチーとの間に次第に芽生え始めた友情。
レヴィを撮った写真は入選した、しかし、その成功がアーチーを徐々に変えていく......。
地道さを嫌い名声を一足飛びに求め、
一時の成功に酔ったアーチーと、傷つきながらも自分の踊りを着実にみつけていき、
成功を重ねていくレヴィとの対比が切ない作品。


バレエ作品名
登場ページ
内容
真夏の夜の夢 P110 ローレンス・ロイヤルバレエの8月の公演の演目。舞台を見たアーチーが「ユリイカ」というカードとともに花束をレヴィに贈ってきた。


白鳥の湖 P137 ローレンス・ロイヤルバレエの3月の公演の演目。レヴィは徐々に出も増え、「期待の新人」という記事も出る。
「スペインノ踊りに期待の新人ってミツグとおまえ
 雑誌に出てたぞ」


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資料作成:天野章生/作成日:1999/9/29 更新2001/4/7

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