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気まぐれと聞いて連想するのは”猫”。我が儘気まま、ふらっと出ていったかと思えば、いつのまにか帰ってきて食事をねだる、愛想をふりまくかと思えば、寝てばかり・・なんて勝手なやつ、でもそこがいいのよ〜というのが猫好きというもの。少女漫画家には、そうした愛猫家が少なくないのだが、かくいう萩尾さんもその一人だ。作中やあとがき等にも猫たちのネタがよく出てくる。初期作品では猫が主役の『クールキャット』。猫たちがまるでエイリアンのように高い知能を持っていて人間達を振り回すコメディだ。そういえば「白ケムシ」(『ストロベリーフィールズ』)というエッセイでは、飼っていた猫のことをあまりに変わっているので”地球の偵察にやってきた宇宙人”ではないかと書かれていた。『赤っ毛のいとこ』ではお風呂に一緒に入っていたり、『この娘売ります!』では3匹の猫たちがオウムのワトソンくんとひと暴れしたりもする。ところで、初期作品に出てくるのは短毛種のネコが多いと思うのだが、比較的近作の『あぶない丘の家』に出てくるエリザベスや連載中の『残酷な神〜』のオクタヴィアンは長毛種のネコだ。萩尾さんの現在の愛猫がモデルなのかなと思うと、少々太り気味なのでは?と気にかかる今日この頃。歴代猫と作品を年代で並べてみる、というのも面白いかもしれない(笑)
話はまったく変わるが、【気まぐれ】というのは世紀末美術の寵児・ビアズリーの残した2枚の油彩画の表のタイトルでもある。ビアズリーといえばワイルドの戯曲『サロメ』の挿画で一躍その名を知らしめた画家だが、このサロメ、萩尾さんも『ユリイカ−詩と批評−
オスカー・ワイルド特集』で描かれているのである(1980年9月号)。先日、卯月が入手したので見せて貰えたのだが、これがまた美しい!(感謝!>卯月)
「斬首」というモチーフは世紀末絵画ではよく出てくるが、『残酷な神〜』でもイアンがジェルミの首を持っている扉絵というのがある。このネタ、最初はサロメ?と思ったりしたのだが少し雰囲気が違う。どちらかというとキーツの”イザベラとバジルの鉢”の中の、森に埋められた恋人の死体から首を切り落として密かに運び出すというシーンが、この扉絵(13巻55ページ)に符丁している気がする。キーツは作中にも名前が出ていたっけ。・・・まったく何かと意味深であることよ・・・。
たった一つのキーワードでも、萩尾作品を渉猟すると深い迷宮に入り込んでいく。それがあまりに広くて深くて、いつまでもいつまでもうっとりと迷い込んでいたくなるのだ。そして煌びやかな迷宮は現在もますます広がりつつある。

この企画は、字数制限を設定してあるのですが、限られた字数の中にいろんなネタを思いつくままぎゅうぎゅう詰め込んだので、話がどんどん飛んでしまい、省略した説明もあったりして訪問者の皆様には目が回るようで、ご迷惑かけたことと思います。
出来ましたら皆様にも、書いていた私と同じように萩尾世界のあちこちを飛んで楽しい時間を過ごして下さればと思いつつ・・。
拙文を最後まで読んで下さってありがとうございました!!(天野)