【萩研◇超速攻・勝手に感想大会】
『バルバラ異界』
その4★彼の名は絶望 彼女の名は希望

『月刊フラワーズ』2003年2月号(小学館)
32ページ・萩尾望都作品



2002/12/31 last update
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座談会

出席者:卯月もよ、小西優里、天野章生、城野ふさみ
update:2002/12/31

城野 : ようやく月刊ペースみたいですねー
卯月 : そうだねー、毎月載るのかなぁ?
小西 : 毎月載ってほしいねえ。しかし、今回のカラー見開き扉良かったね!
城野 : 一回描いたものをPCに取り込んで処理してあるでしょう?
小西 : ああ〜なるほど! それでこんなふうにちょっと人物の線のピントが甘い感じなんだね?
卯月 : あの背景はPC・・?
小西 : バックの処理のテンテンがそうだねえ…フィルタ処理かけている?
城野 : しかし雰囲気がいいよね〜二人で正面見据えて、視線がまたいい。
小西 : 私もこれを見てサイトのビジュアルも花から替えた。アオバがカッコイイよね。
城野 : アオバいい!
小西 : なんかさあ、『ターンAガンダム』の表紙の装画はこれのためにあったのかと〜
城野 : ああ〜なるほどね。納得。あのイラスト群はバルバラの前振りか〜
小西 : きれいだよねえ(うっとり)このピンクというか、甘い色、なかなか出せないよね〜
城野 : ところで表紙の人は誰なんだろう〜関係あるのかな??
卯月 : 誰でしょうねぇ? 音符の指輪に楽譜模様の仮面。
小西 : 音楽が関係あるんでしょうか? 『メッシュ』も思い出したり。
城野 : カーニバルだね。
卯月 : 髪の毛が鳥・・・前の表紙の女の子と対?
城野 : 前? 記憶に遠いぞ〜〜
小西 : 前の表紙ってアオバかなあって言ってたやつ。
卯月 : 髪の毛が羽になってなかったっけ?
小西 : トリノアシ少女でしょう?
卯月 : 足だっけ?
小西 : ニワトリのアシとかいってたじゃないか…
卯月 : ああ、そうそう、にわとりの足。 今度の彼はもっとおとなしめの羽だけど(笑)
城野 : 髪の先が羽っぽいね。
小西 : マフラーもさりげなくトリだよね(笑)  話は変わるけど、渡会さん、三重県人?って問いがあって初めて、そういえば三重には「度会(わたらい)郡」ってのがあったと…(^^;)
城野 : そなのか(笑)
卯月 : 度会郡、あるある。
小西 : まったくぴんときてなくて。三重県出身のくせにな、自分。
城野 : 大黒先生も恐い人でしたね〜
小西 : 怖いですねえ(笑)なんかこう、ホラーなひとだらけですね。明美さんも怖いです。
城野 : これってホラー? サスペンス? SFサスペンス???
卯月 : うん…目白ってひともなんか。
城野 : こわいよね〜
卯月 : 夢の中で青羽を不幸にすれば目覚めるっていう提案はなんかすごい。
小西 : 目白ってメジロ…トリかしら。なんか、鳥が気になるなあ。
卯月 : ヨハネは「羽」だけど…それは関係ないかしら?
城野 : バルバラはトリ関係なのかな?
小西 : バルバラは鳥関係っていうのはあながち間違いではなさそうだよねえ(笑)
城野 : 大黒も鳥にいないかな?
卯月 : 大黒も?
小西 : いま大黒と鳥で検索をかけてみたら、エトピリカが北海道東部の大黒島などで繁殖するっていう情報が出たなあ。
卯月 : エトピリカはまぁ黒いけどねぇ。かわいいよ〜。
小西 : 大黒先生、北海道関係だよね?
城野 : 大学が弘前とか〜〜
卯月 : 大黒様からきてるのかと思ったりしたが。
小西 : いま百田と鳥でも検索したら、なんだか音楽関係の妙なものも拾ってしまった。
卯月 : 百舌鳥(モズ)も連想するけれども。
小西 : 大正の児童文学の『赤い鳥』関係のページにも百田さんという方が…(笑)
卯月 : ぐうぜんぐうぜん・・・
城野 : バルバラワールドの人たちは飛ぶしね〜鳥絡みか〜
卯月 : まぁ大黒先生は体形からしても大黒様って感じでしょ?
小西 : でも鳥と大黒と北海道は掛かり言葉だよな。きっと(しつこい)
卯月 : 大黒天の記述には「不老不死の秘薬を持ち、自分の血肉を与えるとそれに応じてその秘薬を分け与えてくれる」という神様だというのもあったよ。
小西 : うぎゃ。すごいじゃん〜。
卯月 : なんでもかんでも結び付けられるぞ〜(笑)
小西 : うーむうーむ
城野 : まだまだ、解らんことだらけだよね。
小西 : でもたぶんまた説明はなく終わるんだよね(笑)そういう隠喩がらみのことは。
卯月 : そうそう(笑)…これはどうですか(検索でひっかかったんだけど)度会郡の土産物卸業「大黒」さん。
城野 : うわ〜〜っ まんまじゃん。土地と絡む名前なのかもね〜
小西 : 三重のおみやげをお持ち帰りなさったのかしら(笑)
卯月 : 包装紙にある名前を見て「あ、これでいこう」
城野 : ありえる。
卯月 : 斎王祭りで伊勢に行かれていろいろ名前を仕入れてきたとか。北海道は遠軽まんがフェスティバルで。
小西 : まあなんにしても、土地とトリは今回のカナメだよねえ。
(ここで天野研究員加わる)
天野 : ほんとに今回はネーミングの遊びが凄いよねー。目白秀吉ってさー、田中角栄が目白の闇将軍、今太閤って呼ばれていたでしょー?
卯月 : そうか「ヒデヨシ」ってなんだろって思ってたんだが・・
小西 : 田中角栄となにか関連が?
天野 : 連想ゲームが多くて。遊びかなって(笑)
城野 : ひゃ〜〜〜そうなの??
卯月 : ももたろう=「百田太郎」とか。
天野 : そうそう。
城野 : 萩尾先生のネーミングって意味がありそうでないこと多いからな〜〜
天野 : ヨハネがでてきたでしょー、あれって洗礼ヨハネだと思うんだよね。
卯月 : 洗礼ヨハネってなにか特別?
天野 : ヨハネっていっぱいいるじゃない? 聖書で。
小西 : 洗礼者の役割は?
天野 : ワイルドのサロメで首切られる方の、キリストに洗礼を与えたヨハネ。
卯月 : んむむ。。。そういえば名字の「世羅」は先生の飼っていたネコちゃんに「セラ」がいたよね。
小西 : 教会のオルガン弾きなんだよね。じゃあ音楽関係ということで、フラワーズ表紙の謎の仮面の青年はヨハネ〜?(笑)
卯月 : オルガン弾きといえば、ナディア。両親殺しといえばジェルミ。カウンセラーも出てくるし…残酷と何かとても似ていたりして… 全然明るくないハナシだ…−−;楽しいSFじゃなかったな。
城野 : 底にあるキーワードが同じなんだろうね。
天野 : キリヤの名前ってキリエ・エレイソンかなーーと最初に思ったんだけどね。キリエはミサ曲の最初によく使われるんだけど、「主よあわれみたまえ」だったか、そういう言葉。
卯月 : ああ、キリヤとキリエはきっと同じ言葉なのかなと思ってた。発音違い? やはりそうかな。
小西 : しかし、ホントに今回は要素が多いね。
城野 : アレもコレもって感じだよね。パズルのピースを無秩序に出してきたような〜〜
濃くて戸惑ったよ〜。これをどう語れと???って感じになっちゃって(笑)
小西 : とにかく物語より先に要素ばっかり見えてさ。
城野 : そうだね、要素だらけ。
小西 : よっぽど、先生は描きたいことが溜まっていたんでは(笑) 前に「ネオテニー(幼形成熟)」を描きたいという先生のご発言があったでしょう?
卯月 : 『究極の10冊物語』(ダ・ヴィンチ編・メディアファクトリー刊)だよね。
小西 : インタビューでは人類の終末の話から「ネオテニー」という言葉が出てきたんだけど、『残酷』の連載が終わったらそれ(ネオテニー)に関連するSFみたいなものを描きたいっておっしゃってる。今月はそれを非常にリアルに感じますね。
卯月 : 平成7年8月号。
天野 : そんな前にそういう発言を…
城野 : 平成7年から形があったのか〜、寝かせたね〜。
卯月 : 私もその言葉は印象に残っていたんだよね、具体的な感じがして。
小西 : それに加えて三重県で「斎宮をテーマにした作品を〜ぜひ〜」って強い要望があるようだし(笑)
卯月 : ああ、斎王まつりの対談の時に言われていたね(笑)で、地域ネタとして伊勢を出したのかな。
天野 : 三重、絡んでるのは絡んでる(笑)で、斎宮は? 眠り姫に化けたのか?
卯月 : 青羽だったり? 地下室に隔離されてる、と。
城野 : 元ネタを知らないと語り難いな〜〜
天野 : 三重といえば、トリ=三。サンが重なる、というのは『モザイクラセン』だよねえ。
卯月 : え、『モザイクラセン』…まで…
小西 : そういえば「三重」の名前の由来なんだけど、ヤマトタケルが蝦夷征伐の帰りに三重の地まで来て、足が三つに曲がるほど疲れた、と言ったかららしいです。
卯月 : なんて苦しげな由来…^^;
小西 : バルバラの世界にとっても辛いことのある土地、三重、なのか…(苦笑)
んーしかし、今月号の話はなんというか〜末端ばかり気になってしまうよねえ。

卯月 : 末端ばかりね^^;
天野 : 妊娠線って何? とかねー
卯月 : 大黒先生はやっぱり大黒様だと思うんだけど。
天野 : うんうん、思うよね。
卯月 : ハートマークのシャツばかりきているのも気になるし。 大黒様って男女和合の象徴でもあるらしいからハートマーク? とかさぁ^^;
天野 : へー(笑)そうだったのかー
小西 : さっきの「不老不死」「血肉」関連は怖かったのにね。
卯月 : まぁインドから来た神様と日本の神様と混ざってしまうから、色んなイメージが付くわけで。怖い神様の面もあるってことで。
城野 : インド的に怖そうね。
天野 : カニバリズムにつながってくるネタもあったんだねー
小西 : なんかニコニコしてるだけかと思ったら違うんだよね。
卯月 : 大黒様のかついでいるふくろは子宮をあらわしてるらしいよ。
天野 : へえ!! 知らなかったーー
小西 : さっきの妊娠線は。
城野 : そこで繋がるんだ〜へぇ〜。
小西 : なんで渡会はあれでいきなり妊娠線なんて連想するんだと…思ったけども(笑)、なんでだろね?
卯月 : そうそう…渡会さんはキリヤを産む夢も見てるけどさ。
城野 : あの人も病だね〜渡会さん。
卯月 : 妊娠線なんてねぇ、なんかすごーくなまなましいんだけどねえ。
小西 : 妊娠線というのは、出産後に残るものだったっけ?
卯月 : ちぢんで残るんだよね。
天野 : 『スターレッド』では火星は不毛、子供が育たない、ってテーマだったけど。
城野 : SFの感じが変わったよね、先生。前は無機質な感触だった。
小西 : そうだねえ。
城野 : 未来は無機質というイメージが強かったけど、今回はかなり精神世界で。
小西 : でも、バルバラはずいぶんと能動的な感じがしますな。動いている。
天野 : 妊娠、母といえば、青羽のお母さんってまた夢見る少女系じゃないの。
小西 : でもさ、今回の夢見る少女はちょっといつもと違うと思わない?
天野 : うん違うのは違う。それは何だろう??と今後の展開に期待〜〜。生々しさへの変化とも関係あるかな。
城野 : アオバのママちょっとインパクトあったなぁ〜
卯月 : アオバのママ、まつげがなんかすごいんだよね。
小西 : まつげ?
卯月 : とても上向きにパシパシかかれてない?(笑)
天野 : パシパシ。
卯月 : 目についたんだけど(笑)
小西 : アオバのママの瞳は…この描き方は、ものが見えているのか、それとも見えていないのか、わかんないね(笑)今までと違う。怖い。
卯月 : キリヤのママの目つきもすごいよね^^;
天野 : キリヤママのインパクトも凄い。
城野 : アオバのママは母親に支配されているタイプでしょ〜〜。キリヤのママは支配するタイプ
というか自分しかないのか〜。
天野 : なんかずっと「女」で「母親」ではないみたいな。母親が「わたしのロミオ」とか言ってたら息子の自分は何だろーって思うよねえ。
卯月 : でも最初は普通の人だよね。渡会さんに別れるって言っているとき、キリヤを抱いて。
病気になって前世療法を受けたらヘンになった・・・のかな?

天野 : そうそう、賢そうで自立心もあるんだよね。何があってああいう病気になったんですかね。パーキンソン病?
卯月 : 大黒さんの前世療法がヘンなんじゃないの? あやしいやつだな。
城野 : しかしこうみると、過度の保護と放任、正反対だねアオバとキリヤ。
卯月 : アオバの食物アレルギーが「飢えない為のレシピ」の由来だったわけだし。
天野 : 食べるのが苦痛っていうのは、そりゃ生きることの半分に絶望だよねーー
卯月 : 生きることに絶望・・・。そこはキリヤとアオバはシンクロだったってことだね。
小西 : 「彼の名は絶望 彼女の名は希望」っていう今回のサブタイトルには、すごいラブストーリーも隠されているような気がするがなあ。

卯月 : しかし、この物語は最終的にどうなっていくわけかな。ハッピーエンド?
城野 : いや、ほんと。
小西 : どーなるんでしょねえ?
卯月 : アオバは目覚めて、キリヤは生きる意味を見出し、ふたり手を取り火星へ…
城野 : え〜!
小西 : ドミとクラビーのように?
城野 : 火星へ!!
卯月 : いやいや(笑)アオバは目覚めず、キリヤも絶望の中に沈み、二人手を取りバルバラへ…
天野 : (笑)
卯月 : バルバラで幸せに暮らす二人。暗いほうのパターン。
天野 : 暗いよ!!
城野 : ああ〜! パパは通うねバルバラへ!
卯月 : だめね、パパはもうバルバラへ行けないのね。その場合。 大人は外から「あ〜あああ」となげいて終わる。
城野 : そうなの!? 出入り禁止!?
卯月 : 閉じちゃうの、バルバラが。パパも能力を失うの。
小西 : げー
城野 : それもありそうだな〜ある意味ハッピーエンド。
小西 : 時々瀬戸内海に姿は出るけど、そこへは行けないのね(泣)
天野 : 閉じちゃいますか(笑)
小西 : 時をさすらうのね。バルバラ島は。
卯月 : 外から見たら単に二人が死んだってことで。ひえ〜
天野 : 『銀の三角』的な終わりもありだなー
卯月 : 『銀の三角』的というと?
天野 : なんかこう、なんもかんも無かったことに…(笑)
卯月 : わはは
天野 : 傷の修復だけは済んでるのね。
城野 : 言いたい放題だな。
天野 : これアップしていいんでしょうかー(笑)
城野 : ま、今月から月刊ペースのようですし。 毎月楽しみになりますね。
卯月 : 楽しみです。
天野 : うんうん。
小西 : 2003年はバルバラの年!! いいねえ。
天野 : なんかまとめに入ってきましたね!
卯月 : ではそういうことでごあいさつを。
一同 : 萩尾先生、2003年もますますのご活躍を期待しています! そしてここまで読んでくださった皆さまも、良いお年をお迎えください!!

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