【萩研◇超速攻・勝手に感想大会】
『バルバラ異界』
その2★眠り姫は眠る血とバラの中

『月刊フラワーズ』2002年10月号(小学館)
31ページ・萩尾望都作品



2002/8/31 last update
戻る

img


side-a side-b


side-a

対談卯月もよ&小西優里 
update:2002/8/31

小西:サブタイトルがいきなり変わっててさー。
卯月:うん・・・前回あのサブタイトルに意味が!と思っていたから「は?」だったけど。
小西:いきなり出てくる人もこのひと誰?だしね(笑)
卯月:でも「眠り姫」とみたとき「青羽のこと」だとは思った。
小西:マージョリーだねえ、眠り姫って。
卯月:そうそう、マージョリーも眠るよね。思考を停止すると眠る・・・身体活動も停止する。っていうのキマリなんだね。
小西:キリヤは?
卯月:キリヤはなんなんだかわからんが、シンクロするひとなんじゃないのかね〜青羽と。
小西:ほお、キリヤが?
卯月:いや〜だって意味なく美少年でてこないでしょう(笑)
小西:(笑)そっかな。黒髪の王子様かな。
卯月:眠り姫の王子は黒髪だったかしら。
小西:青羽は眠って待ってるわけだ、キリヤ王子様を。ところで「パラサイコ」ってなんだっけ?
卯月:超心理学だって。
小西:超常現象とか?
卯月:そういえば萩尾先生、ずいぶん前に次作はなにかについて書きたいとおっしゃってて・・・単語だけ思い出した。「ネオテニー」だ。
小西:「ネオテニー」ってどこにあったの?
卯月:『究極の10冊物語』のインタビューだから、だいぶん前のやつ。
小西:「ネオテニー」ってNeoteny。幼型成熟。なんかそれも意味深ですな。
卯月:「心臓を食べる」ってなんかあるんだっけ?
小西:「心臓を食べる」と不老長寿にいいって、インドで。
卯月:人魚の肉みたいなもんか、心臓。
小西:人の生きた肝臓と心臓を。前世療法のサイトで見たよ。
卯月:あと、あの島の形。
小西:手だよね。
卯月:だよね? 誰にでもそうみえるよね^^; 血のりのついた手形だよね。
小西:あ、そうそう、そんな感じ。
卯月:壁にべっとりついたやつ。父親のか母親のか自分のか・・あれは青羽が両親を殺したってことなわけ?
小西:どうでしょう。今月の『フラワーズ』は吉野作品も家族殺しだし〜。
卯月:スプラッタ流行り? なんだろうねー? あのサバイバルのも結構血なまぐさいし。
小西:でも、萩尾先生のバラと血が落ちてくるイメージはすごいねえ。視覚的だよね。
卯月:血の雨がふるのがこわかったですよ・・・だいたい、この研究所はなんで青羽の夢を分析しないといかんの?
小西:彼女を事件の参考人? 容疑者として・・
卯月:起こしたいから? なぜ? どーせなんかあるんだ、どんでん返しが。
小西:この研究所が呼んだ渡会さんは、犯罪者の夢をスキャンできる人ってことだし。
卯月:パラサイコの研究所であって警察じゃないのに・・・超常現象の原因を知りたいから? なんかな〜あやしいよな〜。
小西:伊勢出てきてるし。
卯月:萩尾先生は休暇中に、遠軽にも伊勢にも行かれたんだろうね? 遠軽はまんが祭りみたいのがまたあったのかな? 伊勢は・・・。
小西:斎王まつり(笑)
卯月:その両方で海老を食べられたのだよ、きっと。
小西:そうかもねえ。
卯月:イアンもロブスター食べてるじゃない? きっとああいうのがお好きなんだろうね?
小西:うんうん。
卯月:私もイギリスで海辺にいったらロブスター食べようと思ってたんだけど、レストランのメニューに探せなくて。そしたらアメリカ人かなっていう夫婦がロブスター頼んでたのよ!
小西:(笑)
卯月:運ばれて行くお皿にロブスターのしっぽやはさみがみえて・・・“それだよそれ”って・・・だからナニってなんでもないんだけど。
小西:いや、なんかその状況がわかるような(笑)
卯月:それにイチジクなんだけど、これがイギリスで何度か食事に出てね。びっくりした。生のママではなかったんだけど。
小西:へえ、そうなんだ?
卯月:道端の果物の屋台に並んでいたりしてね。日本ではもうめったにイチジクを食べなくなったのに。一回目のとき、萩尾先生はイチジクもお好きなんだな〜と思ったんだけど。イチジクにもなんか意味がありそうだけどもね。
小西:今回の作品って、すっごく盛りだくさんな感じするよね。意味ありげにぎっちり詰まってる。SFだからかなあ?
卯月:なんでも意味あるっていったらこじつけられるから、探ってもしょうがないけどねぇ。作者の思ってもいないことまで勝手に意味付けしてたりするね、きっと。
小西:でも、無意識に描いてたとしてもなにかしら意味を見ちゃうよね、こっちは(笑) しかし、これほど色々わかりたい〜って思うものが描いてあるのに、全然わからんわ〜〜〜。
卯月:ところで、青羽=マージョリー説としたら。
小西:渡会氏も冒頭でキリヤを産む夢を見るっていうのがイアンだ・・・。
卯月:んー・・・同じモチーフが多いんだほんと。
小西:しかし、なんで、男の人が男の子を産むのか、という。
卯月:男の人はほんとは産む夢なんか見ないんじゃないかと思うんだけど、どう?
小西:色々解釈はあるんだろうけど生理的によくわかんないね、私は。
卯月:知らないこと、それにイアンみたいな若者が「産む」とか発想しないだろうなぁと。
小西:うん。萩尾先生がなぜそういうことを描くのかが、面白いなあ。
卯月:でも、渡会さんはイアンかっていうと、これがなんだかリンドンみたいで。
キリヤはジェルミか? ちょっと問題児っぽいし。
小西:キリヤってあの、青羽の写真のフクロさわっただけで感じるわけね・・・何かを。やっぱこれは、青羽の意識とシンクロなのかなあ? 
卯月:キリヤの「希望はない」っていうのもジェルミの「愛を信じない」だっけ? あれに似てると思ったんだよね。
小西:ああ、なるほどね。
卯月:母親と暮らしててなにか不幸があって「自分の希望を言ったりしない」子どもになってるわけだ。希望は叶わないもの、と彼は思ってるのよ。
小西:でも、お父さんには会いたいから来たんだろうし、行くのやめればと忠告もする。いい子だよね。
卯月:そうそう、大人の前ではいい子しちゃう、ジェルミもそうだったけど。あぶないよね。
小西:けなげで辛そうだよ・・・
あとね、16才の青羽。先月号の雑誌表紙の女の子は青羽だよねえ?
卯月:青羽かなあ。あの髪の毛がなんか怖いよね・・・鳥の足みたいなんだもの。
小西:トリのアシ!?
卯月:そうそう・・・顔の左側の方は葉っぱみたいなんだけど、右側の長いほうが足みたいなの・・・。
小西:(笑)なんかこの女の子は植物化してるとは思うけど、そっか、トリのアシか。
卯月:鳥の足が青羽の方を掴んでるみたいに見えたのね・・・でもこれは・・・木の根っこかも!! 
小西:それなら植物だけども・・・
卯月:『ハーバル・ビューティ』のマスターとか連想するよね。
小西:昔の萩尾作品で「花や草のようにというのは何にも気にかけないことらしい」っていう台詞があるけど。
卯月:どこでだっけ?
小西:『湖畔にて』。『トーマの心臓』の後日談の・・・
卯月:は〜、自然と一体になるってことかな。いいね。
小西:バルバラでの花や草もそういうことかなあ。そうだといいなあ。トリのアシじゃなくて〜(^-^;)

注1…ダ・ヴィンチ編集部『究極の10冊物語』(96年メディアファクトリー)※初出は『ダ・ヴィンチ』95年8月号(リクルート)
注2…『湖畔にて エーリク 十四と半分の年の夏』:『ストロベリーフィールズ』(76年新書館)所収の絵物語で『トーマの心臓』のエーリクとシドの後日談を描いたもの。その中でシドがエーリクに「わたしたちも夏中は花と草になろう」と言い、一緒に夏を過ごすエーリクが「彼の花や草のようにというのは何にも気にかけないことらしい」と思う。[p18-19]

△top 戻る

side-b

対談: 岸田志野&城野ふさみ
update:2002/8/31

岸田:連載第二回についてはレビューではなく対談で、ということになりまして〜
城野:このコンビじゃ先が知れていますけどね(笑)
岸田:ま、すでに期待はナイと思われますので(笑)どんどん行きましょう
城野:はい〜。で、1話2話読んでどうっすか〜?ハマれるキャラはいた??
岸田:いきなりキャラ話かい!(笑)
城野:私達でまず話すことと言ったらソレしか…
岸田:私はね〜やはり千里さんチェックです!
城野:やっぱ即答じゃん(笑)私は渡会さん。
岸田:お父さんのほう?
城野:そう、パパ。好みだ〜
岸田:渡会パパいいよね、私も好き。
城野:ノリツッコミできるキャラだ!と思って喜んで見てました
岸田:ノリツッコミ(笑)。ただこっちがツッコミ入れるだけならイアンを越えるキャラはいないが〜
城野:そそ、イアンはボケっぱなしでしょ〜。渡会パパは自分でボケて自分で突っ込む。高等技術よ〜芸人の基本よ〜
岸田:芸人…どこにハマってんだか(^^;
城野:いやね、パパのさー、日常と職業のギャップ感が私的にはぐっときたのよー。
岸田:凄い職業だよね〜。夢探偵ってのがなんかであったが…ああいう感じの。
城野:芒洋としているのにさー凄い職業なんだよー
岸田:スプラッタ苦手、とか言いつつ(笑)。仕事的には堅い、っつーかシリアスだよね
城野:一話目と違って凄いエグい話がばらまかれてましたねー二話目。
岸田:カニバリズムとくるとはねぇ…びっくりですよ!
城野:一話目の、夢の中を漂うような雰囲気から一転して。怖かったよ〜
岸田:一話目だけの時はさ、ほんと「夢の中を漂うようだわ〜」って思って読んでてさ、二話目に来て「夢だった!」ときたときには、何故か非常に驚いた(笑)そのものだったというのに。
城野:私も!「萩尾先生が夢オチ?!」とか思って(笑)。正確には夢オチではないんだけど。
岸田:そうそう“正確には”違うのよね〜。
城野:とにかく二話目冒頭と、一話目までのギャップにはビビった
岸田:コレ何重構造なんだろ〜…うー、わくわくするぅ
城野:次がバルバラ島とはかぎらないよねー、と読者を不安のどん底に突き落とすよね。予想が出来ない
岸田:予想ははなから不能です、私のアタマでは!
城野:萩尾先生の連載ってリアルで読むといつも最初に途方に暮れるのよ〜
岸田:ああ、わかる〜そのカンジ。
城野:でも中盤くらいになると、ある程度の形がわーって浮き出てくるじゃない?もう虜。
岸田:虜。それにしても、のっけから来た来た来たーーー!って読み応えのある少女漫画で私は嬉しい(T-T)
城野:正しい少女漫画とは一線を画していますけど〜(苦笑)
岸田:正しくないかな?(笑)
城野:SFは少女漫画界ではちょっと異質じゃないのかなー?
岸田:まだ時代はソコで止まっているのか!?(笑)
城野:とまってるよー!少女漫画はやはり少女向けの漫画だもんよー
岸田:でもさ、萩尾SFは…もちろんこの『バルバラ』も青年誌とかに載ってても全然おかしくないけど…でも読み手というか受取手は「少女」なんではないかといつも思う。うまく説明できないけど〜
城野:いやいや、正しいと思う。萩尾先生って自分に向けて漫画描いているんだなーと私は思ったりするのよ。
岸田:ほー、自分に向けて?
城野:自分の中の女の子の部分ちゅーか…
岸田:あ、納得。そんな感じそんな感じ!
城野:もちろん、読み手をまるで無視してるとかそういうんじゃないんだけど。描き手として、すごーく気持ち良さそうに描いてそうだな〜って。
岸田:今回の『バルバラ』も楽しそう?
城野:女の子描くのがたのしそう〜
岸田:アオバね。
城野:うん。マージョリー以降、先生は女の子描くのが楽しそうじゃない?
岸田:マージョリーはデカかったよねえ、あのキャラで何かふっきれた感じ!何か公式を発見したような。
城野:迷いなく、好きなタイプはこれです!っていうね。でもさ〜、それを言うなら
岸田:何?
城野:千里さんも好みだよね、先生の(笑)。私もですが!
岸田:私もです(笑)アレは少女漫画キャラの王道というかさ〜!
城野:正統派だよね!
岸田:そそ、それそれ、正統派。けっして主役には来ないのだが!(笑)
城野:必ずいる脇の美形。
岸田:もはや必須の謎の美形。
城野:素敵な長髪〜〜〜
岸田:影あるところもそそりますよ〜〜〜
城野:…わしらバカだ…(笑)しっかり先生の術中に。もっと他に言うことありそうなもんなのに、つい美形に戻ってしまう…病だねこりゃ。
岸田:美形はいるだけで価値がありますからね!(断言)。この際病とバカと言われてもいい!
城野:バカにならずにどうしますか!
岸田:そのとおりです!!…でさ、千里さん(^^)。この後もくるよね?
城野:千里くるでしょー、世界が交互に語られるのかなー?
岸田:あの島現実にもあるというハナシだしね?
城野:現実世界にも居る?
岸田:千里はあの“アオバ夢”の中でも長く眠ってるという設定だったしさ〜気になりますよ〜
城野:だー駄目ー萌えてきた〜千里さーン!!
岸田:よし、ともに萌えましょう、萌えてナンボです!
城野:筋違いのとこばっかりなわしら(笑)
岸田:でさでさ、渡会パパがヒトの夢の中を行き来できるという能力があって、千里さんも同じような力があるようだし?千里さんはキーマンですよ、絶対に。
城野:なるへそ〜そこにキリヤがどう関わってくるのか?
岸田:キリヤ!渡会息子(笑)。彼もくるよね〜当然ね〜
城野:だって今回扉だったよ?彼
岸田:そういやそうだわ。アオバが主役となれば相手…というか対応キャラはキリヤだしね?
城野:年齢ってどうなってたっけ?キリヤは15才で、アオバは?
岸田:ちょっと待て、今見る。…16才。9才から7年間眠ってると。
城野:適当な年齢かな。
岸田:適当ですね。…って別に年齢近くなくていいんですけど(笑)
城野:(笑)そりゃそうだ。
岸田:でもキリヤもいかにも何かアリアリな感じだから〜
城野:アオバの写真にも感応してたしね〜
岸田:キリヤ…エビカニが苦手というところに深い謎が…?
城野:それは関係ないのではー(笑)
岸田:でもさ、結構なかなかに繰り返してなかった?舞台を北海道に移してまで〜(笑)
城野:全然予想つかないけど…はっ!甲殻類が攻めてくるのか?!
岸田:攻めてくるとまでは(^^;。でもまあ、「食べ物」はキーワードだし。
城野:【飢えないレシピ】だから…やっぱ甲殻類かな〜(まだ言っている)
岸田:それはだからカニバリズム、でないの?人食い。「飢えないレシピて…(^^;」って絶句したよ、今回。
城野:あー!そうか!…今気が付くか!わし。でもちょっといやかもー(笑)
岸田:このへん、凄いっつーか、ぶっとばしてるんだよな〜萩尾先生って。普通そこを描くか?みたいな(笑)
城野:かっとんでるなー流石「ポーの一族」の作者だ。何故だよ。
岸田:ほんとだよ、何故(笑)
城野:いや自分でもよくわかんないけど(笑)…猟奇?
岸田:人に聞くなー。しかし心底尊敬、かっこよすぎる。ほんと昔も今も、生涯チャレンジャー!という。
城野:どんとこい!ファンとしては受けて立つぜ!
岸田:おうよ!
城野:渡会パパの元妻、伊勢のお母さんも気になるところだし。
岸田:まだまだこれからだよね〜〜〜〜
城野:何が出てくるのか〜〜〜長いなー2か月。
岸田:来月休載痛いな(笑)なんで休みなのよぅ〜〜〜せっかく月刊なのに〜!
城野:まあまあ、いろいろ事情はあるでしょう
岸田:最初の「前後編」っていうのは何だったのかと問いたくなるこの展開!
城野:何がどうなって前後編でおちつく構想だったんだろうねー
岸田:前号の予告見るとさあ、「アオバを狙う謎の男の正体は?」とか煽ってあるんだよね(笑)
城野:全然狙ってないって(笑)
岸田:渡会パパの設定が、大きく変更になったっちゅーことなのかな?とか穿ってみたり。
城野:髪の色も黒かったのにね〜。サブタイトルも変わったし。
岸田:このへんのバタバタ具合を勝手に取り沙汰するのも、リアルタイムならではの喜びです(笑)…ただのイヤな読者じゃんソレ!
城野:でも、ほんとそうだって。連載どのくらいになるかわかんないけど…
岸田:三回で終わらないことだけは確か。ファンとしては嬉しい(笑)
城野:ほんと楽しみだ〜…あ。今…
岸田:どしたの?
城野:どうしよう、思い当たってしまった。これってさあ…『モザイクラセン』と構成が同じだよ!
岸田:おおー!!そういやそうかも!
城野:どうしよ〜〜めちゃめちゃ好きカモー
岸田:私も好きだ、あの話。
城野:すんごい好きなのよ。構成が、世界観が。
岸田:少女まんが〜なカワイイ雰囲気のファンタジーと見せかけて、根っこが結構グロいところも似ている
城野:恐い王様とか生け贄とか死人が〜〜
岸田:アオバとキリヤは…ミラとラドリ?
城野:あれもミラはノーテンキだった。ラドリはマジだった
岸田:そういや千里さん系キャラもいましたよ
城野:フォリンだ!
岸田:いいよね〜まさに「少女のためのSF」!!
城野:いいよ〜〜〜あれがまた読めるなんて〜〜〜
岸田:凄い、こーれは楽しみ!
城野:どうなっていくか注目です!
岸田:うお〜〜〜!!(わけもなく絶叫)
城野:わおーーー!!(つられて絶叫)

△top

戻る
[HOME] [レビュー扉へ]


◎掲載の文章、資料及び図像についての複写および転載はご遠慮ください。
ご意見・ご感想はBBS 図書の中庭まで