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日々の折々、図書の家研究員がおすすめ漫画をナビゲート。今回は「雨」をテーマにセレクトしてみました。
激しい雨、冷たい雨、優しい雨、主人公達の心を映し出す雨が、あなたの心に沁み込んでいきます。
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ポーの一族
萩尾望都

[初出]1972年
『別冊少女コミック』9月号〜12月号



 物語の後半に降り出した雨はしだいに激しくなり雷雨となって劇的なクライマックスを呼ぶ。その構成の見事さと印象的な雨のシーンの数々。海に降る雨をただ眺めているエドガーとメリーベル。その雨をついて走ってきたアランがメリーベルの手をとる。雷鳴の中、傷を受けるシーラ、そして……。次々と消滅していく大切な者たちを雨に濡れながら凝視するエドガー。雨の冷たさが沁みてきます。

天使の擬態
萩尾望都

[初出]1984年
『プチフラワー』11月号




 
ぽつぽつと小雨のあたる冬の鎌倉の海から始まる物語。命を助けてくれた生物教師と「進化」の話を何度もする次子。人にも翼がほしいと願う彼女はかなり突拍子もないけれど、そんな話を受けとめてくれる人に出会えて本当に良かった。物語の佳境、二人がバス停へ歩きながら語り合う場面では9ページにわたって静かに細かな雨が降る。誰にも言えない心をかかえた主人公の替わりに、たくさんの言葉と気持ちを伝えるように。



花は辺りに雨と降り
森川久美

[初出]1983年
『LaLa』11月号
*書影は所収本



 作中、実際の雨はまったく降っていず、題名上でも降るのは雨ではなく「花」。そんなタイトルが表すとおり、想い出の花びらが降りしきり、心に折り重なっていくような物語。せつなく哀しいアンハッピーエンドのラブストーリーなのだけど、しみじみと穏やかで優しい気持ちになる読後感。その理由は、この話が「誰かが誰かを想っている」という人々の想いで美しい環を描いているからだ。そう、両想いだけが恋じゃないすよ!

F式蘭丸
大島弓子

[初出]1975年
『別冊セブンティーン』8〜9月号




 長引いた梅雨の7月、入り乱れるよき子の心情に呼応して、雨は時に強く降りつけ、時に霧のように本心を覆い隠そうとする。それでもやっぱり当たり前に、雨はやがては上がるもの。雨ばかり降る毎日の孤独・妄想・自殺未遂とそっち系フルコースのお話なのに決して陰鬱でないのは、よき子も蘭丸も更衣の君も、変わりたくないのと同時変わっていこうともしているから。雨は穏やかに成長を促してくれる命の水でもあるんだなあ。


きょうは雨
坂田靖子

[初出]発表年掲載誌不明
*書影は所収本



 坂田さんの作品には雨も多いが、そのどれもが雨を楽しもうよ、という気にさせてくれる。こまっしゃくれたリーブのところにやってきた家政婦さんは、やることなすことマジックのよう。雨なのに洗濯したり布団干したり。枯れかけた植木をジャングル気分にさせたり庭の花がぐいぐい巨大化したり。何もなかった筈の冷蔵庫なのに素敵な朝食はどんどん並べられ、おやつにはビワのスフレ! 二人で雨の庭でこれを食べるシーンが印象的な小品なのだ。

壁の女
坂田靖子

[初出]発表年掲載誌不明
*書影は所収本




 貧しい小屋に住む男。雨が降る度に壁に浮き上がるしみが綺麗な女性のように見えるといって孤独を癒す。その慎ましやかな暮らしぶりと、生きることへの前向きな自然体に心が洗われる思いがする。欲をかかずやれることを地道にやって生きていこうとする男の強さがラストで報われていくのが嬉しい。この短編が収録されている『珍見異聞』シリーズは民話風の短編を集めたものだが、坂田さんらしい飄々とした明るさと面白みが溢れていてお薦めの逸品。


雨のにおいのする街
一条ゆかり

[初出]1972年
『りぼん』8月号別冊付録



 “雨のにおい”という、きっと誰もが何かしら情感を持って聞く言葉を使った印象的なタイトルがずっと心に残っている。ハッピーエンドなのがちょっと意外かも? SFとしては甘いけれど、IQ200の天才少年と、超能力ゆえに魔女と疑われる年上の美少女との恋だなんて、こんなストレートなお話今じゃかえって新鮮ですよね。この付録漫画シリーズはどれも秀作ぞろいです。今の一条ファンに、ぜひ読んでもらいたいです。

海にいるのは…
大島弓子

[初出]1974年
『別冊少女コミック』7月号
*書影は所収本




 ヒルデガードの豹変に困惑するアレクサンダーの心を象徴するかのように雨は降る降る、降る。「ザーザーザーザー」黒背景に白抜き手描き文字だけの“雨”。大島弓子にしか描けない、こんな雨!! 傘を持ったつもりの謎のジェントルマンとの雨の中の会話、雨に濡れながらヤケっぱちでタバコ吸うヒルダのいじらしい姿など見て欲しい雨のシーンがいっぱいです。(ちなみに、萩尾望都の雨も降ってます★)



ほろほろ花の散る中で
太刀掛秀子

[初出]1976年
『りぼん』6月号
*書影は所収本



 6月といえば、雨あがりと雨のしずくいっぱいの黄色いエニシダがワンセットのこの作品。華麗なバラやフワフワ夢見るかすみ草でもない、しごく地味〜な庭木の「エニシダ」と憂鬱な「梅雨」をモチーフにして極上の乙女ロマンを醸成するとは、70年代まっこと恐るべし! 高校時代、《24年組》の傍らに毎日のビタミン剤として乙女ちっく名作の一連を備えていたのも、無意識なカウンセリングだったのかなーと思いますよ。ぜひ梅雨時期に。

夢みる星にふる雨は…
三岸せいこ

[初出]1981年
『ぶ〜けデラックス』9月10日号




 辺境の星パローディアには、明るい色の雨が降る。けぶるような午後には薄銀灰、古い街の夕暮れには紫、朝の目覚めには柔らかなみどり…。失恋の痛みをかかえていた主人公クロエも、無数の色を持ちやさしく降る雨に心をほぐされ癒されていく。雨の色は短い言葉で説明されるだけなのに、透明な光に透ける色がぱあっと目の前に広がる驚き。恋と謎解きとSFとおとぎ話で彩られた雨の星の物語、アニメにしたらさぞ美しいだろうなあ。


作品紹介を担当するのは
 卯月もよ  小西優里  天野章生  岸田志野  城野ふさみ(今回お休み)

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