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日々の折々、図書の家研究員がおすすめ漫画をナビゲート。今回は「春の花」をテーマにセレクトしてみました。
固かった蕾がいっせいに目覚める春。コマから溢れる満開の花々があなたの心を柔らかく包み込みます。
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ゴールデンライラック
萩尾望都

[初出]1978年
『別冊少女コミック』3〜5月号



 満開のライラックの花陰でかくれんぼしてた幼いヴィー。彼女を見つけるビリー。なぜだかライラックから、沈丁花の香りがしてくるような……錯覚が。気丈なヴィーが喪服代わりにライラック色のドレスを着るエピソードも印象的。美人だからこそ出来るワザですけどね。歴史的背景も織り交ぜられていて、TVドラマに丁度いいと思うな、いかがでしょ?

メリーベルと銀のばら
『ポーの一族』より
萩尾望都

[初出]1973年
『別冊少女コミック』1〜3月号




 
ポーの花といえば「ばら」ですが、本作では他にも印象深い春の花々が。メリーベルの髪をからめたジンチョウゲ、永遠の婦人シーラの若き姿にスミレ、アート男爵の恋人メリーウェザーの香るサンザシ。花言葉を調べてみたら驚いた。ジンチョウゲは「不死」、スミレは「貞節/あどけない恋」、サンザシは「希望/ただ一つの恋」…ひゃあ!? こんなところでもイメージは補強されていたんですねえ…。



ジャパン・ライフ
『マーガレットとご主人の底抜け珍道中』より
坂田靖子

[初出]1986年
『プチフラワー』5月号



 坂田さんはイギリスに行ったことがないのです。ホントです。イギリス人でもありません。なのに、この作品は海外の人が垣間見た不思議な国・ジャパン、なのであります。お風呂好きでキレイ好きで、紙と木でできてる家に住んで、おじぎばかりして、桜の季節はそりゃ〜、もうファンタジック。金沢からどこにも動かないで、あらゆる国、あらゆる時代を縦横無尽に描ける、それが坂田靖子ワールドの、これはそのほんの一端なんですよ。

天人唐草
山岸凉子

[初出]1984年
『週刊少女コミック』2号




 可愛らしい空色の花が咲き乱れる春の道。散歩の度に「あ、天人唐草!」と言うその裏で「岡村響子、30歳」と呟く私。マニア友達がそばにいれば一緒に「きえぇ〜」と奇声を上げるところだ。そのくらいこの作品は衝撃的だった。春の花をモチーフにしながら人を凍てつかせるこの心理的恐怖。小さいカワイイ花の名前の意味のエグさと、同時に美しい別名を知ったのも山岸先生のお陰。春の度に思い出す、さすがの逸品です。


風の娘 -アネモネ-
『花図鑑』より
清原なつの

[初出]1994年
『ぶ〜け』7月号



 花束にもならぬ雑花アネモネに自分をたとえ、誰からも好かれないと言うあんぬに「花束になるために花は咲いているんじゃないよ」とニコニコ言ってくれる高津くん。清原作品の男子は軽くて呑気、でもちゃんと、迷える女子の手をしっかり引っ張ってってくれるのです。悲しい恋をしたって、春は巡って、花はまた咲く。そんな日常の小さなサイクルが「命の営み」なんて壮大なテーマにナチュラルに導かれていく、この作品が大好きです。

春のふしぎ
岡田史子

[初出]1968年
『COM』4月号




 頭に花を抱いた人々が住まう、幻想世界。北欧神話の神々の名を持つ彼らは、ビートルズの「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」の音楽が響き渡る場所で、あなたを否定する世界など捨ててしまえと甘く誘う。結局どちらの世界でも居場所をみつけられない主人公。当時、世界はヒッピームーブメント全盛で「花」は平和の代名詞。でもその理想に見え隠れする空虚さを、作者は冷静に見据えている。


みどりの花
あすなひろし

[初出]1964年
『りぼん』春の増刊号



 60年代前半から数々の少女漫画を発表し、後続に強い影響を与えた「あすなひろし」。その洗練された線と画は43年後の今でもキリリと美しい。当時の証言には「バックの花だけなら誰でも描いてたけど、風に花びらを散らしていたのはあすなさんだけだった」とも(註1)。ああ、それ全部、発表順に見たいなあ、花びらの舞い散るあすなひろし! 本作も「24年組」へと受け継がれるきらめきがあふれてます。あすな未見の方はぜひ。*註1-みなもと太郎先生インタビュー「あすなひろしを巡って」

クロッカス咲いたら
田渕由美子

[初出]1976年
『りぼん』3月号




 70年代後半『りぼん』で大ブームだった“乙女ちっく・アイビーまんが”。春にはまだ早い3月の朝。クロッカスの鉢植えを主人公がドジって落としたところから始まって、クロッカスとともに彼女の小さな恋がだんだんとつぼみをふくらませていく姿が描かれます。さすがに時代を感じる部分もあるけど、ドキドキ切ないピュアな気持ちは全く普遍! 現役乙女な若いあなたにも読んでほしい、田渕ブランドの名品です。


白木蓮抄(マグノリア抄)
花郁悠紀子

[初出]1979年
『プリンセス』3月号



 甘く儚く美しい。昭和初期。早春の白木蓮に囲まれた洋館で少女りよが成長の折々に出会うのは、戦争の落とした影を持つ寂しい人々。白馬をひく異人さん、混血の異母兄弟、往年の名女優……。やがて親の決めたいいなづけの魅力に気づき結婚したりよ自身がその洋館の住人となり、咲くマグノリアに過去への思いを重ねる。オムニバスの構成も完璧。これを読んで以後は白木蓮を気軽に素通りできませんよ〜。

赤い糸の伝説
津雲むつみ

[初出]1973年
『週刊セブンティーン』49号〜74年18号




 昔読んだストーリーを忘れても覚えていたのが「白い花」のエピソード。剛との愛を確かめたくて脱いでみたのにキョヒられて…消沈する弥生に夜ごと届けられる白い花。白木蓮、白い木瓜、白つつじ。通常無いほどの障害を乗越えて来たのに剛の気持ちに勝手に疑いを持って悶々とする弥生、女の子は面倒だぁ。ロマンチックに深読みしていた白い花も、単に「夜目についたから」手折ってきただけ、という剛の単純な理由が上手い!


青頭巾
『夢の碑』より

木原敏江

[初出]1985年
『プチフラワー』1〜2月号



 桜の下には鬼が棲む。ほかにも面白い話はいっぱいあるのにこのシリーズの印象が「桜の木の下で寂しく佇む鬼」なのです。木原さんの描かれる美しい男性達はどこか儚げで妖しく、花々さえも恋をする魔性の性が見事に嵌っております。春のふんわりするかわいらしい花々ではございませんが、日本人の原点であるさくらの刹那の美しさ、妖しさを是非お楽しみくださいませ。

春の蕾
谷川史子

[初出]2006年
『クッキーボックス』春号




 「花と惑星」の連作、コミックス一本、順に読んでくださいな。春に咲かせる花は恋の花でしょう〜とかいっちゃったりして(笑) 花の名前を持つ女の子達が主人公の「花と惑星」2話目に登場する蓮子ちゃんのフォロー編。悲しいくらい後ろ向きな彼女がキラキラと花開いていく様をお楽しみ頂けます。谷川史子は90年代の『りぼん』乙女チック路線の第一人者だと紹介されておりました。納得するかしないかは皆様の目で確認めされよ。


作品紹介を担当するのは
 卯月もよ  小西優里  天野章生  岸田志野  城野ふさみ

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