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日々の折々、図書の家研究員がおすすめ漫画をナビゲート。今回は「卒業」をテーマにセレクトしてみました。
何気ない日々こそが大切な思い出。普段はしまってあるあなたの物語も、時にはそっと取り出してみてください。
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カタルシス
萩尾望都

[初出]1992年
『プチフラワー』5月号



 ゆうじは高校卒業直前に亡くなったガールフレンドの死にこだわっていて無気力な浪人生活を送っている。母親が(リアルで怖い!)彼女の葬式より受験勉強を優先させることを彼に強い、彼はそれに従ったからだ。ゆうじは直接対決することで母親の支配から卒業できたようだけど母親はだめだった。心理学の参考書を絵解きしたようにわかりやすい。役に立ちます(笑)。

十年目の毬絵
萩尾望都

[初出]1977年
『ビッグコミックオリジナル』3月20日号




 染め物屋に勤める太一と、新進画家の津川、妻の毬絵は大学の同級生。突然の毬絵の訃報。なぜいつまでも三人でいられなかったのか…と書かれた何年も前の手紙。過去から卒業できていなかったのは二人に置いて行かれた太一ではなかった。哀しい話だが、彼らの「完全な関係」には共感した。ラストで
若い三人の姿に添えられた数行のネームが心に迫り、ぼろぼろ泣けた。この光に包まれたラストこそ萩尾望都。私もずっと卒業できない。



おしゃべり階段
くらもちふさこ

[初出]1978年
『別冊マーガレット』9月号〜1979年3月号



 中学卒業時「いつか2人で遊びに来いよ」と恩師に言われたその約束を、可南と線が果たすのは、浪人を経て大学受験を終えた後。母校ですれちがう「かつての自分」のような後輩たちに目を細め、悩んで悩んで悩んだあの日々があったからこそ今ここにいる、と思う瞬間。ここで初めて可南は「卒業」したんだよなぁ…。卒業シーズンには必ず再読したくなる、珠玉の名作です。

さくらの唄
安達哲

[初出]1991年
『週刊ヤングマガジン』1・2合併号〜41号




 子どもでもなく、でも大人には到底敵わない、無力で所在ない高校時代。悶々と息詰まるあの時代が良いものだなんてホント、後からなら言える呑気なノスタルジー。でも「卒業」できる場所が自分にあったということが得難い青春なんですよ! 過激な性描写で一時は成人指定だったが、この話を高校生が読めないのでは意味無し。なので再発で指定なくなって喜ばしいことです。


櫻の園
吉田秋生

[初出]1985年
『Lala』5月号〜1986年7月号



 春、満開の桜が咲く伝統ある女子高を舞台にした短編形式の物語。主人公は演劇部にいるごく普通の女の子達。しっかりものの部長、同性に人気のあるボーイッシュな女子、遊んでいると思われ不良扱いされてる女子‥同じクラスに確かにいた、と思えるようなそんな女子高生達の心理描写が見事!他愛ない会話や登校風景を懐かしさと切なさで読み返す。出会いと別れが繰り返される、けれど二度とこない。この季節にぴったりの逸品です。

黄色い本
高野文子

[初出]1999年
『月刊アフタヌーン』10月号




 主人公が一心に読み耽る「チボー家の人々」の文字が、コマいっぱいに広がる出だしを見た時、わけがわからないままドキドキした。卒業したらメリヤス工場に就職する予定の実地子。淡々と家事の手伝いや内職をこなしつつも本の世界に入り込む感覚。雑事に邪魔され、布団で遅くまで読んでいると母親に怒られる。本好きなら分かりすぎるくらいに分かる物語世界への没頭。その別れの哀切に何度読んでも涙…。父親の優しさにも涙…。


山田太郎ものがたり
森永あい

[初出]1995年
『ASUKA』11月号〜2000年10月号



 ギャグ漫画です。容赦なく笑わせてもらえます。お金持ち学校で超ド貧乏の山田太郎がセレブな王子様と誤解されてながら卒業までの3年間を描いたお話。意外に感動の卒業式です。それもこれまでのタロちゃんの苦労を知っているからこそ!タロちゃんのこれからの苦労も目に浮かぶようです;;しかし、あのキャラの濃さは是非見てほしい〜!!

笑う大天使(ミカエル)
川原泉

[初出]1987年
『花とゆめ』3号〜1988年23号




 乙女の胸には単純ではない物が渦巻いているのです…。卒業というのはなんだか自分を若かりし苦しき時分へと戻してしまう効果があるようで、なかなかに苦手であります。全く違うタイプの女の子達なのに、少しずつあの頃の自分と鬱屈した女の子が存在している。奇麗に笑って卒業していく彼女達をうらやましいなぁと思ってしまうのであります。


神戸在住 from KOBE
木村紺

[初出]1998年
『月刊アフタヌーン』6月号〜2006年5月号



 神戸で大学生活を送る桂。「かわいくて、やさしくて、ちょい昔の少女まんがの主人公のよう」と作中で友人から言われていて、まさにそうだとちょっと笑った。でもセンチメンタルばかりじゃない。桂の目を通して描かれるのは学生のさりげない日々。それは夢見ているだけの少女期から、社会へ踏み出す自分を少しずつ作っていく大事な4年間だった。読み通すのに時間がかかるのは、卒業までの時間を共にゆっくり歩むから。名作です。

げんしけん
木尾士目

[初出]2002年
『月刊アフタヌーン』6月号〜2006年7月号




 秘めたオタク心を解放する覚悟を決めて“アキバ系”サークル「現代視覚文化研究会(げんしけん)」に入会した笹原の大学生活、その卒業まで。悩みあり、恋愛あり、確執あり、事件あり…いろんなタイプの人間がいるからこそ生まれる楽しさと笑い。だけど、楽しく集った場所にずっといられるわけじゃなく、それぞれが自分の道を選んで次に踏み出していく。オタク的な照れ笑いで隠されてはいるけれど、そんな潔さが詰まっている全9巻。


純情クレイジーフルーツ
松苗あけみ

[初出]1982年
『ぶ〜け』7月号〜12月号、1985年2月号〜88年3月号



 入学式で始まり、卒業式で終わる。まさに女子高の濃密な3年間を、これでもかこれでもかと教えてくれる漫画です。あ、私は地味な公立共学出身なので、実際のところはわかりませんが〜、したたかで生活力旺盛な女子達の描写はあながち虚構ではあるまいと信じるのです。エピローグでそれぞれがそれなりに幸せな大人になってるのがお約束とはいえ嬉しくてなりません!

ハチミツとクローバー
羽海野チカ

[初出]2000年
『CUTiEcomic』6月号〜01年7月号、『YOUNG YOU』01年11月号〜05年11月号、『コーラス』06年1月号〜9月号




 物語は、その始まりから卒業を目指していた。大勢の個性的な登場人物たちのさまざまな印象的なエピソードがどれだけ情熱的に語られていても、それらは竹本をはぐみをあゆを「卒業」させるための踏み石にすぎない……いやいやいや!「全員卒業物語」ですね、これは! もっとも一番ショックだったのは8年かけてやっと彫刻科を卒業した森田が日本画科にしれっと編入して来たことですが。


作品紹介を担当するのは
 卯月もよ  小西優里  天野章生  岸田志野  城野ふさみ

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