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日々の折々、図書の家研究員がおすすめ漫画をナビゲート。今回は「雪・氷」をテーマにセレクトしてみました。
静かに降り積もる雪や氷上で繰り広げられる物語は冬だからこそ味わえるもの。厳しくも美しい世界があなたの心を熱く溶かす!
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みつくにの娘
萩尾望都

[初出]1972年
『週刊少女コミックお正月増刊フラワーコミック』



 終盤の、猟師がかつて山の神に負けて嫁にすることが叶わなかった娘を、凍った淵の中に見つけるシーンは少女画史上屈指の名シーンでしょう。二度と会えないと思っていた少女が冷凍保存されて眼前に…SFです、自然界のタイムマシンです、氷漬けのマンモスから着想したとは思えないロマンチックな変換! 極私的にはリアルタイム当時、萩尾作品であることを不覚にも見逃した痛恨の一品。もちろん再入手果たしました。

エッグ・スタンド
萩尾望都

[初出]1984年
『プチフラワー』3月号




 第二次世界大戦前のナチスドイツ占領下のパリが舞台。「愛と殺人は同じ」と語るラウル少年が、どんなことを考え、何をしてきたのか。事実がひとつずつ明らかになるにつれ、背景に描かれた「雪」の美しさが凄みを増す。真夜中の闇に、全てを覆い隠すように雪は降り続く。凍える寒さには痛みもあるのに、白く輝く雪のあまりの美しさが目をそらすことを許さない。重い物語なので再読が辛い…しかし冬に必ず思い出す、80年代半ばの傑作。


ホワイト・ガーデン
獸木野生

[初出]1994年
『月刊ウィングス』9月号



 真っ白な雪、真っ黒な空。モノクロームの空間に突然現れる光、そこに立つ美しく儚げな男性、あてどもなく語られる彼のいる世界の物語、降りしきる雪の中でそれをただ黙って聞いている少女…。音も色もない雪原に、色鮮やかな別世界が浮かび上がっていく様は、比喩でなく息を飲む美しさ、胸詰まるせつなさ。漫画における「雪」の美しさの究極だと思います、未読は人生の大損。

雪の音
美内すずえ

[初出]1972年
『月刊セブンティーン』2月号




 ビジュアル効果としては文句なし、だけど雨と違い、雪には音がない。盲目という設定で敢えてそこを逆手にとり、せつない純愛を描き出す美内すずえのテクニシャンぶりが冴える一作。ポリーとバートの孤独な心が運命に引きよせられ惹かれあっていくというストーリー、なのに別人が入れ替わるというサスペンスも盛り込んでの、ハラハラドキドキ&勧善懲悪も忘れない。そんなエンタメ魂も素晴らしすぎる!


「はみだしっ子」シリーズ
三原順

[初出]1975年
『花とゆめ』1月号〜81年17号までシリーズ連載



 雪に始まり雪に終わった「はみだしっ子」。ある時は秘密を隠し、雪だるまは攻撃的に窓を見上げ。雪山では4人を追いつめた。衝撃のラストでは告白の窓の外でしんしんと降り積もっていた雪…。思春期真っ只中で出会った4人に私はホントに夢中だった。ネームは心に刺さり、物語はひたすら重かった。ラストから数年後、PC通信の場で同じようなファン同士さんざん盛り上がり、手作りの原画展開催に参加できたのも今となってはいい思い出!

銀のロマンティック…わはは
川原泉

[初出]1986年
『花とゆめ』3号〜7号




 独特のユーモアに、あははけらけら、と笑って読んでいくと、必ず落とし穴があって、どわーーっと泣かされてしまう、それが川原漫画。色恋に縁がない主人公が、負けず嫌いの相方と切れ味の良いスケートにチャレンジしていく過程は小気味良い。が、テクニックはともかく二人に欠けている表現者としての情緒の壁。しかしそれも非情な展開の中、二人の究極の演技シーンにつながっていくのだ。読むたび笑いながらやっぱり涙涙。。。


ユート
原作:ほったゆみ
作画:河野慶


[初出]2005年
『週刊少年ジャンプ』11号〜32号



 コミック追いだったのでこの作品に触れるのが遅かったのが悔やまれます! なぜ、アンケートを書かなかったんだ俺!! 冬の北海道と東京とのスピードスケート環境の大きな違い。素人目にはわからないショートトラックとの差などがわかりやすく描かれています。彼らが成長していく様をじっくり見ていたかっただけに読後に悔しさが押し寄せてきます。こんな良作を何故打ち切ることに〜〜。トリノ五輪に合わせて始められた連載でした 。

ブリザードアクセル
鈴木央

[初出]2004年
『週刊少年サンデー』28号、2005年15号〜連載中




 喧嘩上等で乱暴でな吹雪、と思いきや意外と繊細。周囲を引き込まずには居られないブリザード。血のにじむような努力と持ち前の負けん気。ライバル達の愉快な感情表現も見物。漫画独自のそんなバカな!も多くありますが、そこを突っ込むのは野暮ってもんです。とにかく真っ直ぐひたむき。難しい技や判定基準など詳しく紹介されていて楽しめます。鈴木央はトラウマを描くのが上手いのよーホント。これも五輪合わせの連載スタートでした。


赤い雪
手塚治虫

[初出]1955年
『少女の友』1月号〜5月号



 ロシアの「赤い雪」伝説で魔女と苛められた娘が幸福になるまでの物語。この作品の原画が縁あってデビュー前の牧美也子の目にふれた。牧はその時、手塚の『漫画大学』を片手に、1年かけて単行本1冊分の作品を自己流で描き上げていた。しかし「赤い雪」の生原稿の完璧な美しさに彼女は圧倒された。これが人の手で描かれたものなのか…!? その驚愕は今も等しく共有できる。この画面が放つ熱気とロマンティシズムは現役だよ!!

雪割草
大矢ちき

[初出]1975年
『りぼん』1月号




 昔の少女漫画は季節感が必修。70年代なら冬季のスケートは定番だった。竹宮恵子「ロンド・カプリチオーソ」も西欧の雪景色と本格フィギュアが堪能できたけど、“描きこみのちきちゃま”の氷の世界もすごかった。難病ものということもあり、主人公の苦悩と葛藤の激しさ厳しさは、まさに「酷寒」。しかし、終盤には光あふれる境地にたどりつく…その対比が鮮やかな力作。この冬『ケイコとマナブ』のCMにも使われたあの絵です。


キララ星人応答せよ
大島弓子

[初出]1974年
『週刊マーガレット』10号
*書影は所収本/選集第一期箱入



 家出した望が夜の野原にただ仰向けに寝て、降る雪を体に受けている見開きシーンがとても印象的な作品。「雪」の漫画ならこれ! と思ったら意外と雪が降っている期間は短かくて、望が孤独を強く感じているあいだだけ降っているのでした。そして雪の中で眠ってしまった望がきららに助けられ、病院のベッドで目覚めた時、誤解も雪も溶け、明るい日差しの中、突然のお姉ちゃんの結婚式で大団円。タイトルもほんとに意味深で素敵です。

美代子さんの日記
岩館真理子

[初出]1999年
『YOUNG YOU』2月号
*書影は所収本




 北海道出身の作者ならではの生活観あふれる雪がどっさり積もってます。半年前に夫が死んだのでこの冬は美代子さんが屋根にあがって雪下しです。そこで片思いの大学生のことをぼーっと考えてたんでしょうね、雪と一緒に落下し意識不明で入院。娘が見つけて読んでしまう美代子さんの日記は、冬眠しているかのように眠る彼女の見ている夢と重なります。やがて美代子さんは目覚め、恋の夢も終わる…ようです。ちょっと残念。


作品紹介を担当するのは
 卯月もよ  小西優里  天野章生  岸田志野  城野ふさみ

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