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 日々の折々、図書の家研究員がおすすめ漫画をナビゲート。今回は「月・星・宇宙」をテーマにセレクトしてみました。
 秋の夜長、ふと見上げる空に輝く月星。静かに穏やかに、しかし確かに発せられる光のメッセージ、あなたに届いていますか?
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あそび玉
萩尾望都

[初出]1972年
『別冊少女コミック』1月号



 ジュブナイルSFをいくつか読んだくらいの小学生にゃインパクト強烈で! 以後しばらく「アステロイド」「ノバ」「サイバネチック」「テラ」など魅惑のカタカナ呪文を唱える子供となるのだった。“異質なものは排除される”というテーマに微かな怖れが喚起され、いつ読んでも頬に硬質な都市のひんやりとした空気を感じる。この作品も当時の少女漫画誌の中では相当異質だったしねぇ。

ユニコーンの夢
萩尾望都

[初出]1974年
『別冊少女コミック』4月号




 水の豊かな星の静謐な風景と、漆黒の闇の広がる宇宙との対比が大きなコマ割りで描かれて、まるでパノラマ映画のよう。紙の上に描かれた「星」の輝きと「宇宙」の奥行きがここまでロマンを語れるなんて。星雲を描くには、親指の爪にホワイトを乗せて筆ではじくという技も萩尾先生から教えてもらい、当時は熱で浮かされたようにホワイト飛ばしをしたものです。


月と博士
坂田靖子

[初出]1984年
『銀星倶楽部』2号〜以降断続的に掲載誌を変えて発表



 掲載誌が『銀星倶楽部』と『JUNE』だったりして、自由自在のネタの広さよ! 表題作は月の満ち欠けに夢中になる博士と淡々とした弟子の話。「幽霊」…戦場で親友を亡くしたばかりの男。意に反し敵の若い兵士と噛合わない漫才のようなやりとりをしつつ、見上げる星空はきっとチカチカと悔しいほど綺麗なんだろう。四角いエリック氏がカワイイヒコーキと星空を飛ぶシュールな「ヒコーキ」もまた絶品。私も音符の鉢植えが欲しいっ!!

月の階段
(バジル氏の優雅な生活-24)

坂田靖子

[初出]1985年
『Wendy』夏号




 大きな館の大きな窓に月がかかって、煌々と照らし出される階段。可愛いメイドンが月夜にせっせとガラスを磨く。身分違いの恋は「エマ」みたいだけども、ここで障壁になったのは身分じゃなくて、当主の気持ち。悩み事相談所みたいになってるバジル氏が、人間嫌いになった友人の、不信に凝り固まった心を解いていくのが実にお見事。謎解きの要素を持ちつつ、ラストは後味の良い暖かな一編。やっぱ月といったら坂田作品でしょー!


夢みる惑星
佐藤史生

[初出]1980年
『プチフラワー』春の号〜1984年5月号



 壮麗な古代の都、数々の陰謀、美しい大神官が告げる不吉な予言…。壮大なスケールで萌えどころもたっぷり、でも私がこの話を愛してやまないのは、そこに生きる人間たちの“小ささ”に、なのである。大いなる自然の示す運命に、誰もが弱く無力で、利己的で。人間なんてそんなもの。ただ、自分が救われたいと思うと同時、誰かの救いになりたいと思う身勝手さもまた人間。そう人生は一度きり、自分の信じるものにだけ従って戦え!

「早紀」シリーズ
日渡早紀

[初出]1982年
『花とゆめ』4号(以降連作)




 林に囲まれて周囲の光が届かず、ぽっかり広い空が臨める畑があって。高校時代、夜中に家を抜け出してそこによく星を見に行ったりしてた私。たぶんこの漫画の影響だろうなあ。人に相談するまでもないよなつまんない悩み事も、星なら黙って聞いてくれるわけで。こっちもそれで気が済んじゃったりするわけで。今、中高生が読む漫画で、こういう地味ながら大事な「悩み多き日常のやりすごし方」を教えてくれる漫画ってあるのかなー。


私を月まで連れてって!
竹宮恵子

[初出]1977年
『SFファンタジア 地上編』 〜以降断続的に掲載誌を変えて発表



 竹宮氏のSFは読み応えのあるものがいっぱいありますが月、星、宇宙!とくればSFとかわいい女の子を!という訳で(?)ニナ・フレキシブル嬢で登場。大胆でキュート、賢いけど恋人の前ではわがままで嫉妬深い女の子。恋人は16歳も年上で奇麗な女性とみれば優しくする浮気者、それに宇宙飛行士という危険な仕事。時折見せる心配顔とダンへの想いが切なくて、キュンっとしちゃいます〜SFの知識がなくても楽しく読めますヨ。

うる星やつら
高橋留美子

[初出]1978年
『週刊少年サンデー』39号〜87年8号




 かわいいのぅ〜ラムちゃん。 角が生えててトラ柄のビキニにロングブーツですよ!! 日常の中にSFが自然と入り込んでなんだか不思議な空間〜。気軽に宇宙船が飛んできて、エイリアンが徘徊する。階段にはこたつ猫が居座り、得体の知れない僧侶が不吉な言葉をつぶやく…そんな世界がもしかしたら東京の端っこに存在するんじゃないかしら?ってうっかり信じちゃいそうです。地球一不幸な男? 嘘つけーー!


ジルベスターの星から
竹宮恵子

[初出]1975年
『別冊少女コミック』3月号



 竹宮SFといえば「地球(テラ)へ…」や「わた月」が有名だけど、遠い宇宙への憧れを描いたのはこれが初まり。辺境の星・ジルベスターへの移民の子どもであるジルが、3万光年の距離を超えて地球の少年アロウと交流する。青く澄んだラベンダー色の空があるジルベスターってどんな星? そしてようやくたどりついた星で見たものは…。最後の最後に作者の用意した温もりにほっとする、良き時代のSF佳編です。

星のオペラ
羽海野チカ

[初出]2003年
『COMIC CUE』Vol.300!
*書影は所収本




 完結した「ハチミツとクローバー」最終巻に収められた18ページの短編。今どきの長編作家にこんな短い、それもSFとはなんでまた?と少々疑いつつ読み進んだら、ラストで涙が止まらない。なんだか懐かしい匂いに満ちたSFテイストは、作者がよく語っている先人の仕事へのリスペクトから生まれたものに違いない。ラスト5ページで一気に謎が解け胸をいっぱいにしてくれる、星と宇宙を舞台にした愛の物語。


月と雲の間
岩館真理子

[初出]2000年
『モーニング 新マグナム増刊』vol.12〜2001年vol.20



 ああ身につまされる。中年太りをやがて合理化していくお母さん! 思考・行動・体型・嗜好、どこからどこまでもおばさんだよ。でも心の中は乙女なの。今は見えなくとも黒い雲の向こうにはお月様はちゃんと輝いてる……んだもん! 本人大真面目なのにかなりズレてる人ばっかわっさわさ出てくる岩館シリアスコメディ。大好きでっす!

冬の惑星
奥友志津子

[初出]1978年
『りぼんデラックス』冬の号




 地球の普通人に排斥され、遠い惑星に居場所を定めたネオ人類……いわば萩尾望都の「あそび玉」を向こう側から見たお話だ。飛んでいったティムはどうなったろう、どんな世界が待っていたんだろう……そこから学生だった奥友さんは素直に物語を広げていったに違いない。今読んでみるとSF漫画流行りだった当時より新鮮に感じる。登場人物の前向きな姿も好ましい。後期の未読作品も読んでみたい。

作品紹介を担当するのは
 卯月もよ  小西優里  天野章生  岸田志野  城野ふさみ

●書影はamazonアソシエイトプログラムbk1ブリーダープログラムを参照、または、所蔵本を撮影しています。

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